終活のプロが語る「納骨」とはどういうものか?

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【納骨とはお墓に遺骨を納めること】
 
納骨とは、火葬後に拾骨して、遺骨を墓などに納めることです。
亡くなった人の供養は、葬儀に始まり、火葬をし、自宅で遺骨を安置し、そして納骨することで、1つの区切りを迎えます。
 
「家に遺骨がある間は、なんとなく落ち着かない」
「お骨を納骨することで、やっと気持ちが落ち着いた」
 
このようなことを、筆者は何人もの方から聞きました。
納骨式は、死者を供養する上でとても大切な儀式です。
この記事では納骨についてまとめました。どうぞみなさまの参考になればと思いながら、綴って参ります。
 
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【納骨はいつするの?】
 
納骨の日に決まりはありませんが、四十九日に執り行うことが多いようです。
一周忌、三回忌など、区切りとなる法要にあわせて行うケースもありますし、心の区切りがついてから、という人もいます。
葬儀を終えると、初七日、二七日…と七日ごとに「追善法要」を執り行います。
そして七七日、つまり四十九日を迎えることで、来世の行き先が決まり、成仏すると言われています。
死者の霊は先祖の霊(祖霊)として祀られるため、位牌も本位牌を用意し、仏壇のない家では仏壇を用意します。
お墓がある家では、この四十九日法要に納骨します。
ところがお墓がない家では、まずは気に入った墓地を探して、そしてお墓を建てなければなりません。時間もかかるし、費用もかかりります。
葬儀後の49日間ではとても間に合わないでしょうから、一周忌や三回忌などにあわせてお墓を建てて、納骨すればよいでしょう。
ちなみに筆者の経験ですが、東京都内の寺院では、葬儀当日に納骨をしました。
冠婚葬祭は地域性が色濃く出るため、地域の慣例や寺院の考え方によって、さまざまな納骨の方法があるようです。
 
【納骨式の手順・準備しなければならないこと】
 
●石材店に彫刻を依頼する
お墓に納骨する場合、納骨式に間に合うように、墓石や墓誌に故人様の戒名などを彫刻しなければなりません。彫刻する内容は、戒名、俗名(生前の名前)、命日、年齢などです。
石材店に依頼すれば対応してもらえるので、納骨式の日が決まれば早めに手配しましょう。
金額は20,000円から50,000円くらいでしょう。
 
●仏石に彫刻する場合、まず寺院にお性根抜きをしてもらう
また、礼拝の対象となる仏石(◯◯家之墓、南無阿弥陀仏と彫刻されている石のことです。「軸石」「竿石」などとも呼びます)に彫刻する場合は、いったん寺院に「お性根抜き」をしてもらわなければなりませんので、事前に寺院に依頼しましょう。
 
●納骨式は寺院の読経と家族の焼香
納骨式は、墓前での寺院の読経と家族の焼香で執り行われます。
お墓の中に納骨する際、もしも石を動かさなければならない場合は石材店に立ち会ってもらいましょう(有料の場合が多い)。
 
 
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【お墓以外へのさまざまな納骨】
 
さて、個別にお墓を持たない納骨という選択肢もあります。
 
●本山納骨
西日本を中心によく行われているのが本山納骨です。
その宗旨宗派の本山寺院に納骨するのです。
有名なのは真言宗の高野山への納骨と、浄土真宗の本願寺への納骨でしょう。
高野山への納骨は1000年も前から行われいました。「聖(ひじり)」と呼ばれる無名の遊行僧たちが諸国を遍歴する中で、日本中の人たちに高野山への納骨を勧めたのです。以来、高野山は「日本総菩提所」としてさまざまな戦国武将や有力者や庶民たちの信仰を集め、宗派を問わずに現在でも多くの人たちが納骨に訪れています。
また、京都の本願寺への納骨も、いまでも行われている慣習です。
すべての遺骨を納骨することもあれば、一部をお墓に、一部を本山に、というケースもあるようです。
 
●永代供養(納骨堂・樹木葬・合葬)
核家族化や非定住化が進む昨今では、お墓を持たない選択をする人、または持ちたくても持てない人がたくさんいます。
家族や子孫が先祖の墓を守り続けることが難しいために、遺骨を寺院に預け、永代に渡って供養してもらえる永代供養が大変注目を浴びています。
堂内に設けられた納骨壇、樹木を墓碑とした樹木葬、複数の人たち同じ場所に埋葬する合葬墓など、細かいシステムは異なりますが、最終的に供養を寺院にお任せするという意味では共通した供養の方法です。
 
 
【納骨の地域性 さまざまな供養の仕方】
 
金剛宝院は大分県にありますが、全国的に見ますと納骨の方法は、地域によって実にさまざまです。
これは、宗教や政治などが、上から葬儀の方法を教え伝えていったのではなく、あくまでもその土地に住む庶民たちが長い年月をかけて、自分たちにとって最も合理的で納得できる方法を採用していったからでしょう。
みなさんにとって当たり前だと思われる葬儀の慣習が、実は地域によっては全く違った方法をで執り行われるのです。
 
1. 遺骨を全部持って帰る関東と、一部しか持って帰らない関西
 
火葬された遺骨をすべて持って帰るか、一部しか持って帰らないか。
前者は関東。後者は関西。
東京で火葬した遺骨を大阪に持ち帰って納骨しようとすると壷がお墓の中に入らなかったというのはよくある話です。
東京都心部の火葬場は民営で遺骨の処分ができず、関西などの公営の火葬場では処理ができるとする説。明治維新時、政府の方針に従った関東と従わなかった関西とのちがいとする説など、諸説あります。
骨壺は、関東では7寸壷、関西では3寸を用います。
 
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2. 壷のまま納骨? 壷から出してお骨だけ納骨?
 
さて、壷の大きさが違うということは当然お墓への納骨の仕方も異なります。
関東や九州では壷のまま埋葬し、関西では遺骨を壷から出して土に還します。筆者の知る限り、北海道や名古屋、中国四国地方も関西と同じ方法です。
 
3. お墓の形状も地域によって異なる
 
納骨の方法が異なるということはお墓の形状も異なります。
九州では扉がついた納骨室がありますが、実はこれは全国的に見ても九州沖縄地方がほとんどなのです。
関東のお墓は地中に納骨室を設けます。
また、関西や他の地域では、壷を並べて納めるような棚上の納骨室を設けることなく、土中に遺骨を撒いたり、さらしの袋に納めて土に還るようにします。
 
4. お墓を建てずに納骨堂に納める
 
「納骨堂」と聞くと、お寺の納骨堂を連想する人が多いと思いますが、戦前からその村落で共有の納骨堂を持つ地域があるとも聞きます。その地域では個別にお墓を建立せずに、その村人たちが共同で、つまり家単位ではなく村単位で祖先を供養したのです。
 
5. 大陸の影響が色濃く残る九州・沖縄
 
九州や沖縄地方は大陸の影響が色濃く残っています。
九州のお墓は全国的に見ても大きく、沖縄の亀甲墓などは群を抜いています。
これは、遺骨を土に還さずに骨壺のまま納骨室に納めることで、それだけ遺骨を大切に考えている証だと言えます。
古来の中国では遺骨を自宅に祀り、招魂再生の儀式を執り行ったと言います(人の頭蓋骨が位牌の原型だと言われています)。
儒教では、天に昇った魂と、その魂を宿る肉体とが合致した時に生命を宿すと考え(魂魄二元論)、先祖供養をする上で遺骨をとても大切に考えていたのです。
沖縄などでは「洗骨」といって、年忌法要などにあわせて、遺骨をとりだして水や酒できれいに清めるという風習がありました。また、納骨室を設けて遺骨を大切に保管する九州の納骨は、こうした儒教的考えを尊重した大陸の風習の影響を受けたものがと考えられます。
 
 
いかがでしたか?
亡くなった人を、死後も大切に考える日本人が、その象徴として捉えたのが遺骨です。
さまざまな納骨の方法がありますが、その家、その人にとって最も納得できる納骨方法を検討しましょう。
ましてや地域性のあることなので、インターネットなどからの情報収集にも限界があるでしょう。
分からない時はひとりで悩まずに、近くの寺院や石材店に相談してみましょう。

文責・十村井満